自動車の電動化で変わるクルマの未来 ―現代マネジメントⅠ―
2025年5月27日に実施された「現代マネジメントⅠ」では、引き続き経営支援NPOクラブのご協力のもと、リーダーシップと自動車業界をテーマに講義が展開されました。
シリーズ恒例となっている杉田 一志 氏による経営理論の講義では、今回は「リーダーシップ」がテーマ。リーダーシップ理論の変遷について、実際の事例を交えながら、わかりやすく丁寧に解説してくださいました。
後半では、日産自動車で活躍された小澤伸宏氏が登壇。自動車の電動化について、世界各国のデータや技術動向を踏まえながら、包括的に解説しました。小澤氏は、同社のいわき工場長や横浜工場長を歴任し、その後グループ会社の取締役も務められました。技術畑でキャリアを築いてこられた背景から、講義の内容には一つひとつに根拠が示され、説得力にあふれていました。
地球環境の変動と自動車業界の変化については、私たちもなんとなくは知っているかもしれません。しかし、実際に何が起こっているのかまで理解している人は少ないでしょう。たとえば、自動車を電動化すると、使用される部品点数は約3万点から2万点へと大幅に減少します。これは、部品を供給する多くの企業の雇用に直接関係する重大な変化です。
また、EV(電気自動車)が環境にやさしいと言われても、その電力を生み出す発電段階で温室効果ガスが多く排出されていては本末転倒です。火力発電にたよる日本ではこのことは問題です。こうした背景から、発電から走行までを一体で捉える「Well to Wheel(井戸から車輪まで)」という視点が重要になります。自動車産業は、エネルギー政策との連動が不可欠であり、国ごとに事情は大きく異なります。さらにEVの普及には、コスト・航続距離・充電インフラ・軽量化といった課題の克服が必要です。
こうした複雑な課題は、自動車産業に限らず、あらゆる業界に通じるものです。そんな時代を生きる学生たちに向けて、小澤氏は「チャレンジすること、対応力を身につけること」というメッセージを送りました。
学生からは活発な質疑応答が行われました。「EVの性能には限界があり、経済的に余裕があって環境への関心が高い人向けなのでは?」という問いに対して、小澤氏は「現時点ではその傾向があるかもしれないが、全固体電池の開発が進めば航続距離が大きく伸び、短時間充電も実現するので、状況は一変する」と回答。また、「自分の好きなものを仕事にすることへの不安はありましたか?」という質問には、「これまでたくさん大変なことがありましたが、その中でも『車が好き』という思いがあったから、つらくても楽しいと感じられた」と、自身の経験をもとに語ってくださいました。
受講した学生からは、「EV化を進めていくには、多方面からのアプローチが必要であると学びました」「共に学び合えるリーダーになりたい」といった前向きな感想が寄せられました。
ありがとうございました。
(T.K)